台南市に住む楊老人は、妻に逝かれ、
息子も娘も家を出て、一人暮らしである。

息子の
永祥は日本の大学を出て、
台湾に帰ってきたが、
一攫千金のために
家の金を持ち出すのみで、
家には一切、
金を送ってこない。


娘の月華は娘で自宅に住んでいたが、親の愚痴が耐えられず
家出し、同じ勤務先の外省人と同棲している。

そんな孤独な環境のもと、老人の関心事は
専ら、自分が死んだ後の棺桶探しであるが、
珍しく、来客があった。

娘が、老人の誕生日祝いのため、
誕生日祝いのプレゼントを届けたのである。
涙もろくなった老人は幸福感でいっぱいになる。

この作品名の「故園」は「故郷」のことであり、
ふるさとで、一人寂しく暮らす父親の心境を
思いやりながら書いた作品である。

1956年(昭和31年)直木賞現代社から出版された
『密入国者の手記』、
 
邱永漢自選集『密入国者の手記』(徳間書店刊)、

そして、邱永漢短編小説集『見えない国境線』(1994年)(新潮社刊)に
収録されている。