北京のアメリカ系慈善病院に勤務する
医者の黄博士の夫人、黄太々はアメリカ人。
北京に長く住み、北京を深く愛し、
自分は中国人だと思ってきたが、
戦後、黄博士が突然の病気で亡くなる。
良人に死なれ、黄太々は北京に住む
一老アメリカ婦人にすぎなくなってしまったと嘆く。
彼女には中国人の養女、エリスがいる。
成人し、英国大使館付きの英国人青年、ポールと恋仲になる。
そのポールが本国勤務になり、
ロンドンでの結婚を求める。
だが、戦後の新生、中国政府は
北京生まれの中国人の英国渡航を認めない。
エリスは、英国渡航の道を探るため
中国を出て、香港に移る。
黄太々は、エリス には支援が必要と感じ、
36年住み慣れた北京の邸宅を引き払い、
香港への移住を決める。
この小説は、邱の香港の家の二階を
借りて住んでいたアメリカ生まれの老婦人と
その養女の身の上話からヒントを得て書いた作品で
中国人と結婚して、中国語を喋っていても、
良人が死ぬと、厳然たる国境線が引かれてしまう
という体験を伝える小説である。
(参考)邱永漢 著『邱永漢自選集2香港/刺竹/石/華僑/毛澤西/首/長すぎた戦争/見えない国境線』のあとがき
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