著者は昭和54年に日本人の国籍をとり、
その3ヶ月後に参院選に出馬しました。 

この選挙向けのパンフレットの代わりに
発行されたのが小冊子、『インフレ撃退法』です。

選挙向けのパンフレットというと、
候補者の履歴とか、公約が書き並べられたものを
想像しがちですが、この冊子にはそうした色が全く無く、
物価高が顕著になっていた時代のさなか
生活の役に立つように編集されているところが、
著者ならではのものです。

この冊子の冒頭で著者はメッセージを送りました

「猛烈なインフレが家計を脅かすモンスター(怪物)として、
いよいよ猛威をふるう世相となってきた。
私は3年も前からこのことを予想し、私の本の中で、
また講演の席上で、その対策を述べてきた。

どこの家庭でも、月々の収入のなかから将来に備えて、
なにがしかの貯蓄をしている。
定期預金をしている人もあれば、投資信託を買っている人もある。
また住宅ローンや月掛け生命保険に追われて、
貯金などしている余裕がないという人もある。
 

いままで、真面目にせっせと貯蓄に励む人がよいと思われてきた。
しかし、20%とか30%とかの猛烈なインフレが
襲いかかってくると、家計が圧迫されるだけでなく、
貯蓄の配分の仕方によって結果がまるで違ってくる。
せっせと節約した金を郵便局や銀行に運んでいる人よりも、
住宅ローンの借金返済に追われている人の方が
あっという間に財産家になってしまっているのである。

つまり、インフレを考慮に入れた貯蓄法が必要で、
銀行に預金に行くとしても、
将来、借金をして不動産を買う資金を仰ぐための
予備行為であるとか、
現に貸借関係にあって互いに助け合う形になっている、
とかいうのでなければ意味がない時代になったのである。

こういう時代になったからといって
国全体が存亡の危機に瀕するわけではない。

エネルギーの高騰と財政の大赤字が
インフレという形で家計と家産を脅かしているから、
その直撃を受けないよう、
うまくかわしてとおるようにすればよいのである。

その具体的な方法や物の考え方を
なるべくわかりやすい形で理解してもらうために5人の女性に、
それぞれ20代、30代、50代、と年齢と職業の違う御方に
お集まりいただいて、大家映子さんの司会で、
Q&A方式で、この本をつくったのである。
 

私がこれまで25年間に及ぶ著作生活で書いてきた本は
70冊以上に及び、その中で金銭や経営に関する本は、
いずれも新しい経済の変化に対して
庶民はどう対処したらよいかという、
いわば舵に対する避難誘導員みたいな役割のものであった。

しかし、これからは、物価高という大火事に消防手として
立ち向かわなければならない役回りになってきたので、
いささか戸惑っている。
 

ビルは消防車のハシゴが届かないほど高層化したし、
不燃材のはずが火を吐いて毒性の強いガスが立ちのぼっている。
うっかりすると消防手の方が窒息したり、
負傷して転落死する時代なのだ。
うまく私にインフレの消防手がつとまるかどうかは
いつに皆さんのご協力のいかんにかかわっている」

(『インフレ撃退法』) 。

 とてもわかりやすい冊子で、小さな子供たちが、
将来を生き抜く上で、助けになる経済書だと思い、
この冊子、今も保存しています。